噛み合わせと歪み
不正咬合の歪みの分析
筋突起
筋突起(きんとっき)が下顎頭(かがくとう)と同じく前方変位(お腹側)し頬骨を裏側から圧し物理的歪みストレスを与え頬骨の落ち着きを失わせる結果、頬骨の内方に位置する上顎骨(じょうがくこつ)の慢性的不均衡が生じ咬合病に陥るケースがあります。
下のイラストは、下顎骨を右側から見たものでオレンジ四角で囲ってある場所は筋突起です。
顎の左側にも同じものがあります。
下顎骨の前突
筋突起が下顎頭と同じく前方変位する理由は単純に下顎骨の全体的な前突が挙げられますが、下顎角の位置はそのままで筋突起のみが前方変位している場合もあります。
下のイラストの黄円は下顎角です。
下顎枝ラインが前傾する事で下顎角の位置はそのままで筋突起と下顎頭が前方変位する歪みがあります。
頚椎への圧迫
下顎角(かがくかく)の後ろ側は概ね第3・第4頚椎の横突起があります。
上記の様な歪みの影響で当該頸椎の前方を圧迫しその前側にある気管や食道、舌骨の機能と可動性の低下を招きます。
舌骨は第3頚椎の前方にある骨です。
嚥下障害・舌位の不安定・ドライマウス・呼吸機能低下・喉の症状、etc。
下のイラストは、右の顎を外から見たもので緑色に着色して半透明にしてある骨が下顎骨です。
下顎角(エラ)の後ろに第3・第4頚椎があります。
側頭筋の影響
咀嚼筋(そしゃくきん)の内、筋突起に付く筋肉は側頭筋で側頭面全体に広がり口を閉じる作用を持ちます。
下のイラストは、頭を右側から見たもので見易い様に頬骨を外してあります。
頬骨の内側に筋突起があり側頭筋が付着しています。
側頭筋の内側にある頭蓋骨は側頭骨(そくとうこつ)・蝶形骨(ちょうけいこつ)・頭頂骨(とうちょうこつ)です。
下のイラストの青色に着色してある骨は蝶形骨(ちょうけいこつ)です。
側頭筋と頬骨は除いてあります。
筋突起の変位による側頭筋の過緊張で側頭骨が前方に歪み鱗部(りんぶ)が出っ張ります。
鱗部は側頭骨の上部で耳の上数cmにある部位です。
特に蝶形骨と側頭骨の間の蝶鱗縫合(ちょうりんほうごう)は正常でも側頭部の触診に於いてその膨らみは存在しますがさらに顕著に感じる様になります。
筋突起と蝶鱗縫合の変位の左右差は比例します。
蝶形骨の重要性はここでは割愛しますが、蝶鱗縫合が前方変位することは蝶形骨の歪みを生じる一因になります。
不正咬合の原因
歯科治療
歯科治療による口腔への物理的ストレスは噛み合わせに負の要因をもたらします。
噛み合わせや舌位を含む口腔内の安定は解剖学的に見て頭蓋顔面骨の整合性の範疇に入ります。
抜歯や根管治療などの歯科治療で主に下顎骨・上顎骨・蝶形骨・側頭骨・舌骨などに歪みが入ります。
頭蓋顔面骨の整合性を高めるための手技療法を行う歯科医院はありません。
また、歯列矯正を行うことで頭蓋顔面骨も整合されると過信している歯科医師も多く予後不良の原因になっています。
顎変形症の術後後遺症
口腔外科や歯科医院などで顎変形症の手術を行うことがあります。
上記と同様に歯科領域では頭蓋顔面骨の手技療法は行われませんので歯列のみ整合され頭蓋顔面骨が不整合の状態が生じ予後不良の経過を辿ります。
それに伴う症状は全身に波及します。
集中力の低下、姿勢不良、頭と顔の形状の変化、背中や腰の張り、顎位の不安定、etc。
下顎の脱臼整復法(口内法)
柔道整復師などが行う口腔内に母指を差し入れて整復する下顎の脱臼整復法(口内法)が挙げられます。
顎関節脱臼の整復により受けたストレスが身体に馴染むまでには数日から数週間を要します。
それに伴う顎位や舌位、頭蓋顔面骨の歪みを調整する必要があります。
生活習慣
日常生活での姿勢の癖が顎の歪み、強いては噛み合わせ不良(不正咬合)の原因になります。
うつ伏せ寝や横臥位での就寝姿勢、長時間のスマホや読書による頭位の変化、頬杖や顎杖による頭蓋顔面骨の歪みなどが挙げられます。
整体施術の要点
噛み合わせ(不正咬合)への整体施術は、頭蓋顔面骨の整合性を高め顎位の安定を図ることにつきます。
具体的には、顎関節を成す側頭骨と下顎骨の調整、咬筋のバランス、上顎骨のシンメトリー、上顎骨の後ろに配置する蝶形骨のシンメトリー、頚椎の配列に気を配る事も必須です。
下顎骨の回旋は後頭骨の回旋と相関しておりその調整も忘れてはいけません。
体表解剖からわかる歯の傾きも調整します。
また、関節円板の落ち着き具合も視野に入れます。
例えば、下のイラストは側頭骨の調整箇所ですが、一つの骨内でも場所が変わると歪みのベクトルは複雑に変化しますのでそれらを見極めるためのスキルは必要です。
側頭骨は大雑把に7箇所に分けそれぞれを3〜9分割してクライアントの歪みを把握します。
まとめ
- 噛み合わせ不良(不正咬合)の調整には頭蓋顔面骨の施術が必須である。
- 口腔と顎位と舌位の安定は頭蓋顔面骨の整合性の範疇に入る。
- 筋突起・咀嚼筋・頚椎・舌骨などの施術も視野に入れる。
- 噛み合わせ不良の原因は生活習慣・歯科治療・顎変形症の術後後遺症などがある。