咬み合わせ治療のあり方
「頭蓋調整せざる者、歯を削るべからず。」
顎位の安定は頭蓋顔面骨のシンメトリーが条件です。
クライアントの頭蓋顔面骨のアシンメトリーを把握して徒手調整を行うことで顎位の安定を図ることが出来ます。
多くの歯科医院では頭位・顎位・舌位などに影響を与える頭蓋顔面骨の不均衡をチェックしません。
一時的に歯を削ることで咬み合わせ治療としている歯科医院が殆どでクライアントの予後は悪くなります。
咀嚼筋
咀嚼筋の働きは下顎骨を上げて口を閉じる、咬みしめる、咬み合わせる、顎を前後左右に動かすなどがあります。
側頭筋
側頭筋は側頭骨から始まり下顎骨に付きます。
頭頂骨・側頭骨・鱗状縫合の左右差(歪み)は、左右側頭筋の張力差と筋繊維走行の歪みを生じ、それに伴い顎位のアシンメトリーを招きます。
頭頂骨(とうちょうこつ)の高さ違いはその下側にある左右側頭骨(そくとうこつ)の高さ違いを伴います。
下記のイラストは右側頭部で水色に着色してある骨が頭頂骨、その下で隣り合う骨が側頭骨です。
有対性で左側にもあります。
頭頂骨と側頭骨の間の鱗状縫合、プテリオンからアステリオンまでの左右バランスも手技で施術調整が可能です。
例えば、鱗状縫合の左右の高さ違い(上下歪み)は顎関節(下顎頭)の高さ違いと同じ意味です。
左右の顎関節の高さが違えば最良の噛み合わせを手に入れることが難しくなるのはいうまでもありません。
咬筋
咬筋は頬骨弓から下顎角に付きます。
左右頬骨弓や下顎角のアシンメトリー、咬筋の緊張状態や筋繊維の歪みを確認することなく咬み合わせ調整のために歯を削ると予後はどうなるでしょう。
頬骨の前面は上部・中部・下部と3分割に、頬骨弓の側面は前部・中部・後部と3分割に分けて歪みを見極めます。
また、頬骨弓は上縁と下縁で歪み方が異なり合わせて6分割として考えることが出来ます。
頬骨弓のアシンメトリーは他部位相関先、例えば、冠状縫合・鎖骨・前頭骨などに影響します。
翼突筋
翼突筋は蝶形骨に付きます。
蝶形骨はこめかみの骨で目の裏側で脳の下、上顎骨の後ろで頬骨の内側に位置します。
蝶形骨は多くの頭蓋顔面骨と隣接しそのアシンメトリーが他骨に与える影響は大きく、逆に施術調整で整合性が保たれることで大きな正の効果をもたらします。
その反応は、0.5〜1mmのアシンメトリーに対する徒手調整が秒速で即座に顎位に変化を与えるほど緻密で繊細です。
下のイラストは、下顎角付近を右前下方外側から見たもので水色に着色してある筋は翼突筋です。
下顎骨は半透明にしてあります。
舌骨
口腔内の安定は舌骨(ぜっこつ)の安定と比例します。
舌骨の下には甲状軟骨や輪状軟骨がありその不安定は嚥下や発声に影響します。
舌骨は主に第3頚椎の前方にあり頚椎の配列の不均衡(歪み)にも気を配ります。
第3頚椎の変位は舌骨の変位と同じ意味です。
下のイラストはのど付近を右斜め下から見上げたものです。
水色に着色してある骨が舌骨でその下の灰色の組織が甲状軟骨と輪状軟骨です。
舌骨の後方に頚椎が位置してます。
頚椎の徒手調整で顎位は安定し呼吸が深くなり頭蓋顔面骨が整う様は当院では日常的に確認しています。
冒頭で「頭蓋調整せざる者、歯を・・・」とありますが、「頚椎調整せざる者、歯を・・・」と言い換えても良いくらい重要です。
歯は下顎骨では歯槽骨というポケットに埋まっていますが、その位置自体は頚椎の横突起の一部である前結節と相関しています。
下のイラストは頚椎をお腹側から見たものです。
オレンジ四角で囲ってある場所が前結節です。
前結節の配列の不均衡は頚椎の全体的なアシンメトリーとは別です。
頚椎と頭蓋顔面骨の徒手調整を歯科治療の現場で行う歯科医療従事者が増えれば、クライアントに対する治療上の説得力は体感も合わせて既存治療と比べ物にならなくなるでしょう。
まとめ
- 正しい噛み合わせは、頭位・顎位・舌位の安定の上に成り立つ。
- 頭位・顎位・舌位の安定は、頭蓋顔面骨の整合性の上に成り立つ。
- 咀嚼筋、主に側頭筋・咬筋の筋繊維の走行の歪みと左右差を見極める。
- 舌骨の変位は頚椎の変位と同じ意味で、嚥下・ドライマウス・喉の症状などに関与する。